ぜにがたへいじとりものひかえ 044 おたみのし
銭形平次捕物控 044 お民の死

冒頭文

一 「親分、世の中はだんだん悪くなって来ますね」 ガラッ八の八五郎は妙なことを言い出しました。鼻毛を抜いて、手の甲に一本ずつ植えて、それを、畳の上でプーッと吹くといった、太くて粗い神経の持主の言葉ですから、この——世の中が悪くなった——と言ったところで、大した真剣味はありません。 「たいそう考えちゃったね。何が一体悪くなったんだ」 平次は日本一の機嫌でした。手掛けた事件は全部片が付いたし、女房の

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1935(昭和10)年10月号

底本

  • 銭形平次捕物控(二)八人芸の女
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2004(平成16)年6月20日