ぜにがたへいじとりものひかえ 036 はちにんげいのおんな
銭形平次捕物控 036 八人芸の女

冒頭文

一 「親分、とうとう神田へ入って来ましたぜ」「何が? 風邪の神かい」 その頃は江戸中に悪い風邪が流行って、十二月頃から、夜分の人出がめっきり少なくなったと言われておりました。 「いえ、風は風だが、あの『疾風(はやて)』と言われている強盗(おしこみ)で……」「どこへ入ったんだ」「神田も神田、新石町(しんこくちょう)の大黒屋で」「ヘエ、そいつは近過ぎて知らなかったよ。いつだい」「昨夜(ゆうべ)——と

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1935(昭和10)年1月号

底本

  • 銭形平次捕物控(二)八人芸の女
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2004(平成16)年6月20日