なつとしょうねんのたんぺん
夏と少年の短篇

冒頭文

私とキャッチ・ボールをしてください 金曜日の午後、高等学校からの帰り道、いつも乗る私鉄の十二両連結の電車のなかほどの車両から、三年生の伊藤洋介はプラットフォームに降りた。どの車両からも、何人かの乗客が、それぞれになぜか疲労した様子で外へ出てきた。線路をむこうへまたぐ木造の建物が、プラットフォームの端にあった。誰もがそこにむけて歩いた。 歩きながら伊藤洋介は空を仰いだ。梅雨のあいまの曇った

文字遣い

新字新仮名

初出

私とキャッチ・ボールをしてください「野性時代 第19巻第6号」角川書店、1992(平成4)年6月号<br>あの雲を追跡する「野性時代 第18巻第10号」角川書店、1991(平成3)年10月号<br>which 以下のすべて「野性時代 第18巻第5号」角川書店、1991(平成3)年5月号<br>永遠に失われた「野性時代 第15巻第12号」角川書店、1988(昭和63)年12月号<br>エスプレッソを二杯に固ゆで卵をいくつ?「野性時代 第19巻第5号」角川書店、1992(平成4)年5月号

底本

  • 夏と少年の短編
  • 東京書籍
  • 1992(平成4)年10月7日