ひとづま |
| 人妻 |
冒頭文
住宅難の時節がら、桑田は出来ないことだとは知つてゐながら、引越す先があつたなら、現在借りてゐる二階を引払ひたいと思つて見たり、また忽気が変つて、たとへ今直ぐ出て行つて貰ひたいと言はれやうが、思(おもひ)のとゞくまではどうして動くものか、といふやうな気になつたりして、いづれとも決心がつかず、唯おちつかない心持で其日其日を送つてゐた。それも思返すと半年あまりになるのである。 二階を借りてゐる其家は
文字遣い
新字旧仮名
初出
「中央公論 文芸特集第一号」中央公論社、1949(昭和24)年10月1日
底本
- 荷風全集 第十九巻
- 岩波書店
- 1994(平成6)年11月28日