かげをふまれたおんな
影を踏まれた女

冒頭文

一 Y君は語る。 先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知っている。それは影を踏まれたということである。 影を踏むという子供遊びは今は流行(はや)らない。今どきの子供はそんな詰まらない遊びをしないのである。月のよい夜ならばいつでも好(よ)さそうなものであるが、これは秋の夜にかぎられているようであった。秋の月があざやかに冴え渡って、地に敷く夜露が白く光っている宵々

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部」1925(大正14年)9月

底本

  • 岡本綺堂 怪談選集
  • 小学館文庫、小学館
  • 2009(平成21)年7月12日