けんなんじょなん
剣難女難

冒頭文

武名競(ぶめいくら)べ血飛沫(ちしぶき)鹿(か)の子(こ) 一 生田(いくた)の馬場の競(くら)べ馬(うま)も終ったと見えて、群集の藺笠(いがさ)や市女笠(いちめがさ)などが、流れにまかす花かのように、暮れかかる夕霞(ゆうがすみ)の道を、城下の方へなだれて帰った。 この丹波の国の年中行事となっている生田の競馬は、福知山の主催になるものであったが、隣藩である宮津の京極丹後守(きょうごくたんごの

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

底本

  • 剣難女難
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年9月11日