だれ?
誰?

冒頭文

その日、私はかなり遅くまで仕事をやった。そしてやっと書物机から眼をあけた(ママ)ときは、もう黄昏の仄暗さが書斎に迫ってきていた。私はそのままで数分間、じっとしていた。非常に根気をつめた仕事の後なので、頭がぼうっと疲れて、ただ機械的に四辺(あたり)を見廻した。 仄かに薄れゆく光線に包まれて、あらゆるものが灰色に、不確実に見えたが、夕陽の最後の照りかえしで、卓子(テーブル)と、鏡面と、壁にかけた油

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1923(大正12)年1月増刊号

底本

  • 幻影城 9月号(第2巻・第10号)
  • 幻影城
  • 1976(昭和51)年9月1日