みなもとよりとも |
| 源頼朝 |
冒頭文
雪千丈 一 「佐(すけ)どの」「佐どのうっ」「おおういっ」 すさぶ吹雪(ふぶき)の白い闇にかたまり合って、にわかに立ち止まった主従七騎の影は、口々でこう呼ばわりながら、佐殿のすがたを血眼(ちまなこ)でさがし始めた。 「見えぬ」「お見えなさらぬ」「つい黄昏時(たそがれどき)、篠原堤(しのはらづつみ)へかかる頃まではたしかに、われらの中にお在(わ)したものを」 暗然と、求める術(すべ)を失った眼は
文字遣い
新字新仮名
初出
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
底本
- 源頼朝(一)
- 吉川英治歴史時代文庫、講談社
- 1990(平成2)年2月11日