ひゃくしんのふ
百唇の譜

冒頭文

千代之助の悲しい望 二人は葉蔭の濡れ縁に腰をおろして、夕陽の傾くのを忘れて話し込んで居りました。 小田切三也(おだぎりさんや)の娘真弓(まゆみ)と、その従兄(いとこ)の荒井千代之助(あらいちよのすけ)は、突き詰めた恋心に、身分も場所柄も、人の見る目も考えては居なかったのです。 千代之助は二十一、荒井家の冷飯食いで、男前ばかりは抜群ですが、腕も学問も大なまくら、親に隠れて、小唄浄瑠璃の稽古

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸倶楽部」1931(昭和6)年9月

底本

  • 野村胡堂伝奇幻想小説集成
  • 作品社
  • 2009(平成21)年6月30日