うもんとりものちょう 31 どくをいだくおんな
右門捕物帖 31 毒を抱く女

冒頭文

1 その三十一番です。 江戸城、内濠(うちぼり)の牛(うし)ガ淵(ふち)。——名からしてあんまり気味のいい名まえではない。半蔵門から左へつづいたあの一帯が、今もその名の伝わる牛ガ淵ですが、むかしはあれを隠し井の淵ともいって、むしろそのほうが人にも世間にも親しまれる通り名でした。濠の底にありかのわからぬ秘密の隠れ井戸が六つあって、これが絶えずこんこんと水を吹きあげているために、その名

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 右門捕物帖(四)
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1982(昭和57)年9月15日