たいらのまさかど
平の将門

冒頭文

御子と女奴 原始のすがたから、徐々に、人間のすむ大地へ。 坂東平野(ばんどうへいや)は、いま、大きく、移りかけていた。 ——ために、太古からの自然も、ようやく、あちこち、痍(きず)だらけになり、まぬがれぬ脱皮を、苦悶するように、この大平原を遠く繞(めぐ)る、富士も浅間も那須(なす)ヶ岳(たけ)も、硫黄色の煙を常に噴いていた。 たとえば、茲(ここ)にある一個の

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

底本

  • 平の将門
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1989(平成元)年5月15日