けんのよんくんし 05 おのただあき
剣の四君子 05 小野忠明

冒頭文

()神子上典膳みこがみてんぜん時代 一 「松坂へ帰ろうか。松坂へ帰ればよい師にも巡(めぐ)り会えように」 典膳(てんぜん)は時々考えこむ。彼も迷い多き青年の二十歳へかかりかけていた。 郷里伊勢の松坂は武道の府であった。世に太(ふと)の御所とよばれた国主の北畠具教(とものり)卿は、卜伝(ぼくでん)直系の第一人者であった。その権勢、その流風を慕って、由来、伊勢路の往来に

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部 七月号~九月号」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7~9月

底本

  • 剣の四君子・日本名婦伝
  • 吉川英治文庫、講談社
  • 1977(昭和52)年4月1日