なべしまかいのかみ |
| 鍋島甲斐守 |
冒頭文
一 問う者が、 (世の中に何がいちばん多いか) と訊いたところ、答える者が、 (それは人間でしょう) と、云った。 問う者が又、重ねて、 (では、世の中に何がいちばん少いか) すると、答える者が、 (それも人間でしょう) と、云ったという話がある。 江戸町奉行(えどまちぶぎょう)の鍋島甲斐守(なべしまかいのかみ)は、いつもその話を思い出して、その人間の中でもいちばん多いものは悪人
文字遣い
新字新仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋、1936(昭和11)年9月号
底本
- 吉川英治全集・43 新・水滸傳(二)
- 講談社
- 1967(昭和42)年6月20日