にほんめいふでん だいなんこうふじん
日本名婦伝 大楠公夫人

冒頭文

一 木も草も枯れ果てて、河内(かわち)の野は、霜の白さばかりが目に沁(し)みる。 世は戦(いくさ)に次ぐ戦であった。建武(けんむ)の平和もつかの間でしかなかった。楠木正成(くすのきまさしげ)、弟正氏(まさうじ)たち一族の夥(おびただ)しい戦死が聞えた後も、乱は熄(や)まなかった。山は燃え、河はさけび、この辺りを中心として、楠氏(なんし)の軍と、足利勢(あしかがぜい)との激戦は、

文字遣い

新字新仮名

初出

「主婦之友」昭和15年1月号

底本

  • 剣の四君子・日本名婦伝
  • 吉川英治文庫、講談社
  • 1977(昭和52)年4月1日