ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁

冒頭文

()幸福人こうふくじん あの座敷に寝ころんで見たら、房総(ぼうそう)の海も江戸の町も、一望(ひとめ)であろうと思われる高輪(たかなわ)の鶉坂(うずらざか)に、久しくかかっていた疑問の建築(たてもの)が、やっと、この秋になって、九分九厘まで竣工(でき)た。 お茶屋でもなし、寺でもなし、下屋敷(しもやしき)という造りでもない。一体、どんな大家族が住むのであろうと、下町では、話題になっていたが、さ

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月

底本

  • 牢獄の花嫁
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年6月11日第1刷