はりのきとうげのりんどう
針木峠の林道

冒頭文

針木(はりのき)峠は人も知る如く、明治九年に新道が開鑿(かいさく)され、数年の後にそれが再び破壊されてしまってからは、籠川の河原や雪渓を辿ることなしに峠を通過することは殆んど不可能であった。若(も)し之(これ)を避けて迂廻しようとすれば、更に多くの困難と危険とに遭遇しなければならぬ。それが為に針木越は悪絶険絶を以(もっ)て世に鳴り渡った。富直線の未だ開通せざる以前に、信州方面から立山へ登るには大抵

文字遣い

新字新仮名

初出

「山岳」1918(大正7)年2月

底本

  • 山の憶い出 上
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年6月15日