ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
笛吹川の上流(東沢と西沢)

冒頭文

笛吹川は秩父街道最奥の部落である広瀬附近から上流になると子酉(ねとり)川と呼ばれている。広瀬から稍(や)や爪先上りの赤土道を、七、八町も行くと、原中に一本の大きな水楢(みずなら)か何かの闊葉樹が生えている側(そば)で路が二つに岐れる。右は雁坂(かりさか)峠へ出るもので、今は峠ノ沢の製板業が盛(さかん)になった為に、板を運搬するトロッコの鉄路が通じている。左に沿うて下り気味に辿って行くと雁坂峠から発

文字遣い

新字新仮名

初出

「山岳 第11年第1号」1916(大正5)年10月

底本

  • 山の憶い出 上
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年6月15日