げんめつ
幻滅

冒頭文

僕は白状する。あの妙な男の話したことは、僕をまるっきり混乱させてしまったのである。だからあの晩僕自身が感動した通り、他人に感動してもらえるように、あの男の話を繰り返すことは、僕には今もってできそうもない気がする。どうもあの話の効果というのは、まったく一面識もない男が、呆れるほど率直に僕に語ってくれた、その率直さのみにかかっているらしい。—— あの見知らぬ男が、サン・マルコの広場で、はじめ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • トオマス・マン短篇集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1979(昭和54)年3月16日