しゅんすいとさんば
春水と三馬

冒頭文

斯様(かよう)な標題を掲げたが、何もこんな陳腐な題目で柄にもない文学論を試みようとするのではない。「図書」という雑誌の性質に鑑み、此二人に関係ある書物に就て閑談を弄したいと思うのである。 私の家に子供の折から見慣れて居た二つの草双紙絵本がある。一は為永春水の『絵入教訓近道』で、一は式亭蔵書印のある『赤本智恵鑒(あかほんちえかがみ)』である。何時何処で父が購求したのか、つい聞洩して仕舞った

文字遣い

新字新仮名

初出

「図書」岩波書店、1939(昭和14)年1月

底本

  • エッセイの贈りもの 1
  • 岩波書店
  • 1999(平成11)年3月5日