どくしょとちょしょ
読書と著書

冒頭文

1 「貴下は今何をして居られるか。」 と、よく人に聞かれる。実のところ、私は少数の青年たちに古い書物の講義をして居るのである。第一に聖書、第二にアウグスチヌスの『神の国』、第三にアダム・スミスの『国富論』。尤もこの中第一と第二は素人学問であるから、専門家から見れば幼稚なものであるにきまってる。 併し古典を読むのは真に楽しい。何千年何百年という「時」の試煉を経た書物で、しかも単に考古的

文字遣い

新字新仮名

初出

「図書」岩波書店、1940(昭和15)年7月

底本

  • エッセイの贈りもの 1
  • 岩波書店
  • 1999(平成11)年3月5日