よがしゅっぱんじぎょう
予が出版事業

冒頭文

人を笑わせるつもりで私はこの見出しを付ける。さて素人にしてふいと本を出して見たくなる者は幾らもあるが、私のは業と名づけてもよい程に出版道楽が年久しく、又悔いるということを知らない。そうして世間ではあまり構い付けぬのだから、自伝を書く価値があると思う。尤も西には正宗敦夫君という巨頭が居ることは承知だが、彼は同時に印刷に興味をもち職工も大抵は自分一人きりだったらしいが、とにかくに虫眼鏡で見出すほどの工

文字遣い

新字新仮名

初出

「図書 第47号」岩波書店、1939(昭和14)年11月

底本

  • エッセイの贈りもの 1
  • 岩波書店
  • 1999(平成11)年3月5日