ぜにがたへいじとりものひかえ 290 かげぼうし
銭形平次捕物控 290 影法師

冒頭文

發端篇 一 「親分、變なことを聽きましたがね」 ガラツ八の八五郎は、薫風(くんぷう)に鼻をふくらませて、明神下の平次の家の、庭先から顎を出しました。いとも長閑(のどか)な晝下りの一齣(ひとこま)。 「お前の耳は不思議な耳だよ、よくさう變つたことを聽き出せるものだ。俺の方は尋常なことばかりさ、蒔(ま)いた種は生えるし、借りた金は返さなきやならねえし」 平次は氣のない返事をしながら、泥鉢(どろばち

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「キング」1952(昭和27)年

底本

  • 錢形平次捕物全集第三十九卷 女護の島異変
  • 同光社
  • 1955(昭和30)年1月15日