ぜにがたへいじとりものひかえ 238 こいわずらい
銭形平次捕物控 238 恋患ひ

冒頭文

一 「親分は、戀の病(やま)ひといふのをやつたことがありますか」 ガラツ八の八五郎は、たいして極りを惡がりもせずに、人樣にこんなことを訊く人間だつたのです。 素晴らしい秋日和(びより)、夏の行事は一とわたり濟んで、行樂好きの江戸つ子達は、後(のち)の月と、秋祭と、そして早手廻しに紅葉(もみぢ)見物のことを考へてゐる時分のことでした。 相變らず椽側に腹ん這ひになつて、不精煙草の煙の行方を眺め

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「サンデー毎日」1950(昭和25)年8月13日号~27日号

底本

  • 錢形平次捕物全集第三十五卷 花嫁の幻想
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年11月15日