みどりのたね
緑の種子

冒頭文

緑の種子 種子(たね)はこれ感覚の粋(すゐ)、緑は金の陰影(かげ)にして、幽かに泣くはわが心。種子を哀(かな)しめ、よきひとよ、冷たく、小さき芥子のたね、その一粒(ひとつぶ)に心せよ、歔欷(すすりな)けかし、日の光。種子(たね)はこれ霊魂(たましひ)の粋、生ける宝石、「時(とき)」の秒、金と緑の夜の秘密、淫慾の芽の潜伏所(かくればしよ)、阿片(オピウム)の精。種子を哀(かな)しめ、よきひとよ、緑は

文字遣い

新字旧仮名

初出

緑の種子「朱欒 2巻9号」1912(大正元)年9月1日<br>棗の樹「白樺 3巻10号」1912(大正元)年10月1日<br>人食ふひと「朱欒 3巻4号」1913(大正2)年4月1日<br>ペンギン「朱欒 2巻6号」1912(明治45)年6月1日<br>悲みの奥「朱欒 2巻6号」1912(明治45)年6月1日<br>夕とどろき「朱欒 2巻6号」1912(明治45)年6月1日<br>石竹「朱欒 2巻6号」1912(明治45)年6月1日<br>屋根の風見「朱欒 1巻2号」1911(明治44)年12月1日<br>初冬のわかれ「朱欒 1巻2号」1911(明治44)年12月1日<br>春を待つ間に「朱欒 1巻2号」1911(明治44)年12月1日

底本

  • 白秋全集 3
  • 岩波書店
  • 1985(昭和60)年5月7日