だいにしんじゅしょう
第二真珠抄

冒頭文

ほのかなるもの ゆめはうつつにあらざりき、うつつはゆめよりなほいとし、まぼろしよりも甲斐なきはなし。幽かなるこそすべなけれ、美しきものみなもろし、尊きものはさらにも云はず。ひとのいのちはいとせめて、日の光こそすべなけれ、麗かなるこそなほ果敢な。星、月、そよかぜ、うす雲のゆくにまかする空なれども。ふりそそぐものみなあはれなり、雨、雪、霰、雹に霙、それさへたちまち消え失せぬ。土に置く霜、露のたま、靄、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「ARS 1巻2号」1915(大正4)年5月1日

底本

  • 白秋全集 3
  • 岩波書店
  • 1985(昭和60)年5月7日