こきょうしちじゅうねん
故郷七十年

冒頭文

起筆の言葉 神戸新聞は今年満六十年を迎えるという話である。人間でいえば還暦というわけであろう。ところが初めて私が生れ故郷の播州を出て関東に移ったのは、それより十年以上も古い昔のことであった。それから私の心身がだんだん育って行くにつれ、私の眼が全国的に拡がり、世界中のことにも関心を引かれるようになったことに不思議はない。しかしそれでも幼い日の私と、その私をめぐる周囲の動きとは八十余歳の今もなおまざ

文字遣い

新字新仮名

初出

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

底本

  • 故郷七十年
  • のじぎく文庫、神戸新聞総合出版センター
  • 1989(平成元)年4月20日