ゆけるつじのくん
逝ける辻野君

冒頭文

辻野君とは会で五六回、会の流れで二回会つたばかりであるから余り深いつきあひであつたわけではない。からだの弱さうな人だと思つてゐた。からだの弱さうな、気の弱さうな人であるけれども、あれで却々野心家だとも思つてゐた。彼の出した本にどんな本があるかも知らないが、リヴィエールのランボオ論とモオリヤックのイエス伝——結局彼の死の前年に出した此の二つの翻訳書だけが私の頭に残つてゐる。 正直に云つて、だから

文字遣い

新字旧仮名

初出

「四季」1937(昭和12)年11月号

底本

  • 新編中原中也全集 第四巻 評論・小説
  • 角川書店
  • 2003(平成15)年11月25日