ぜにがたへいじとりものひかえ 317 おんなつじぎり
銭形平次捕物控 317 女辻斬

冒頭文

一 「又出ましたよ、親分」 八五郎は飛び込んで來るのです。 一月も末、美しく晴れた朝でした。平次はケチな盆栽(ぼんさい)の梅をいつくしみながら、自分の影法師と話すやうに、のんびりと朝の支度を待つて居たのです。 プーンと味噌汁の匂ひがして、お勝手では女房のお靜が、香の物をきる音までが、爽(さは)やかに親しみ深く響いてゐるのでした。 「何が出たんだ。お化けか、山犬か、それとも——」「辻斬です

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年2月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第三十四卷 江戸の夜光石
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年10月25日