ぜにがたへいじとりものひかえ 322 しのひやく |
| 銭形平次捕物控 322 死の秘薬 |
冒頭文
一 「親分、長生きをしたくはありませんか」 八五郎がまた、途方もないことを言ふのです。 晴れあがつた五月の空、明神下のお長屋にも、爽(さは)やかな薫風(くんぷう)が吹いて來るのです。 「へエ、よく〳〵死に度い人間は別だが、大抵(たいてい)の者は長生きをし度いと思つてゐるよ——尤も」 と言ひかけて、平次はニヤニヤしてゐるのです。 「何んです、氣味が惡いなア、あつしの顏を見て、いきなり笑ひ出し
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年7月号
底本
- 錢形平次捕物全集第三十四卷 江戸の夜光石
- 同光社
- 1954(昭和29)年10月25日