ぜにがたへいじとりものひかえ 316 しょうがつのかおり |
| 銭形平次捕物控 316 正月の香り |
冒頭文
一 八五郎は斯う言つた具合に、江戸の町々から、あらゆる噂話(ニユース)を掻き集めるのでした。その噂のうちには、極めて稀(まれ)に、面白い局面を展開するものがあり、中にはまた驚天動地的な大椿事の端緒(たんちよ)になるのもないではありませんが、十中八九は、——いや九十何パーセントまでは、愚(ぐ)にもつかぬ市井(しせい)の雜事で、不精者の錢形平次が、腰を上げるほどの事件は、滅多にはなかつたのです。
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年1月号
底本
- 錢形平次捕物全集第三十三卷 花吹雪
- 同光社
- 1954(昭和29)年10月15日