ぜにがたへいじとりものひかえ 306 ちちゅうのとみ |
| 銭形平次捕物控 306 地中の富 |
冒頭文
一 「へツ、へツ、へツ、親分」 ある朝、八五郎が箍(たが)の外(はづ)れた桶(をけ)見たいに、笑ひながら飛び込んで來ました。九月もやがて晦日(みそか)近く、菊に、紅葉に、江戸はまことに良い陽氣です。 「挨拶も拔きに、人の家へ笑ひ込む奴(やつ)もねえものだ。少しは頬桁(ほゝげた)の紐を引締めろよ、馬鹿々々しい」 平次は、精一杯に不機嫌な顏を見せながらも、實はこの二三日、八五郎を待ち構へて居たのです
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1953(昭和28)年11月号
底本
- 錢形平次捕物全集第三十三卷 花吹雪
- 同光社
- 1954(昭和29)年10月15日