ぜにがたへいじとりものひかえ 231 かぎのあな
銭形平次捕物控 231 鍵の穴

冒頭文

一 「わツ驚いたの驚かねえの」 ガラツ八といふ安値な異名(いみやう)で通る八五郎は、五月の朝の陽を一パイに浴びた格子の中へ、張板を蹴飛ばして、一陣の疾風のやうに飛び込むのでした。 「此方が番毎驚くぜ。何んだつて人の家へ來るのに、鳴物入りで騷がなきやならないんだ」 親分の錢形平次は、さう口小言をいひながらも、さして驚く樣子もなく、淺間な家の次の間から、機嫌の良い笑顏を見せるのでした。 江戸開府

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「小説の泉」1948(昭和23)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十九卷 浮世繪の女
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年7月15日