ぜにがたへいじとりものひかえ 209 うきよえのおんな
銭形平次捕物控 209 浮世絵の女

冒頭文

一 「親分、聽いたでせう?」 ガラツ八の八五郎は、鐵砲玉のやうに飛び込んで來ると、格子戸と鉢合せをして、二つ三つキリキリ舞ひをして、バアと狹い土間へ長んがい顎を突き出すのです。 「聽いたよ。今鳴つたのは、上野の辰刻(いつゝ)(八時)だ。どんなに腹が減つてゐても、まだ晝飯は早え」 その癖平次は朝飯が濟んだばかり、秋の陽の退り行く、古疊の上に腹んばひになつて、煙草の煙を輪に吹いてゐるのでした。 「

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「小説の泉」1948(昭和23)年9月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十九卷 浮世繪の女
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年7月15日