ぜにがたへいじとりものひかえ 091 わらいだけ
銭形平次捕物控 091 笑い茸

冒頭文

一 伽羅(きやら)大盡磯屋(いそや)貫兵衞の凉み船は、隅田川を漕(こ)ぎ上つて、白鬚(しらひげ)の少し上、川幅の廣いところを選(よ)つて、中流に碇(いかり)をおろしました。わざと氣取つた小型の屋形船の中は、念入りに酒が廻つて、この時もうハチ切れさうな騷ぎです。 「さア、皆んな見てくれ、こいつは七平の一世一代だ——おりん姐さん、鳴物(なりもの)を頼むぜ」 笑ひ上戸(じやうご)の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1939(昭和14)年8月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十六卷 笑ひ茸
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月28日