ぜにがたへいじとりものひかえ 002 ふりそでげんた
銭形平次捕物控 002 振袖源太

冒頭文

一 兩國に小屋を掛けて、江戸開府以來最初の輕業(かるわざ)といふものを見せた振袖源太。前髮立の素晴らしい美貌(びばう)と、水際立つた鮮(あざ)やかな藝當に、すつかり江戸ツ子の人氣を掴んでしまひました。 あまりの評判に釣られるともなく、半日の春を小屋の中の空氣に浸(ひた)つた、捕物の名人で『錢形』と異名を取つた御用聞きの平次。夕景から界隈の小料理屋で一杯引つかけて、兩國橋の上にか

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十六卷 笑ひ茸
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月28日