ぜにがたへいじとりものひかえ 090 きんせいのふ
銭形平次捕物控 090 禁制の賦

冒頭文

一 笛の名人春日(かすが)藤左衞門は、分別盛りの顏を曇らせて、高々と腕を拱(こまぬ)きました。 「お師匠、このお願ひは無理でせうが、亡(な)くなつた父一色(しき)清五郎から、お師匠に預けた禁制の賦(ふ)、あれを吹けば、人の命に拘(かゝ)はるといふ言ひ傳へのあることも悉(こと〴〵)く存じて居りますが、お師匠の許を離れる、この私への餞別(せんべつ)に、たつた一度、此處で聽かして下さるわ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1939(昭和14)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十六卷 笑ひ茸
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月28日