ぜにがたへいじとりものひかえ 097 いいなずけのし
銭形平次捕物控 097 許婚の死

冒頭文

一 「親分、小柳町の伊丹屋(いたみや)の若旦那が來ましたぜ。何か大變な事があるんですつて」 「恐ろしく早いぢやないか、待たしておけ」 「へエ——」 平次は八五郎を追ひやるやうに、ガブガブと嗽(うが)ひをしました。 美しい朝です。鼻の先がつかへる狹(せま)い路地の中へも、金粉を撒(ま)き散らしたやうな光が一パイに射して、初夏の爽(さは)やかさが、袖にも襟(えり)にも香りさう

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 錢形平次捕物全集第十六卷 笑ひ茸
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月28日