ぜにがたへいじとりものひかえ 098 べにふでがんもん
銭形平次捕物控 098 紅筆願文

冒頭文

一 「御免」 少し職業的に落着き拂つた聲、錢形平次はそれを聞くと、脱(ぬ)いでゐた肌(はだ)を入れて、八五郎のガラツ八に目くばせしました。生憎今日は取次に出てくれる、女房のお靜がゐなかつたのです。 「へツ、あの聲は臍(へそ)から出る聲だね」 ガラツ八は頸(くび)を縮(すく)めて、ペロリと舌を出しました。 「無駄を言はずに取次いでくれ」 「當てつこをしませうや、——年

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 錢形平次捕物全集第十六卷 笑ひ茸
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月28日