やみよ
暗夜

冒頭文

(その一) 取まわしたる邸の廣さは幾ばく坪とか聞えて、閉ぢたるまゝの大門は何年(いつ)ぞやの暴風雨(あらし)をさながら、今にも覆へらんさま危ふく、松はなけれど瓦に生ふる草の名の、しのぶ昔しはそも誰れとか、男鹿やなくべき宮城野の秋を、いざと移したる小萩原ひとり錦をほこらん頃(ころ)も、觀月のむしろに雲上の誰れそれ樣、つらねられける袂(たもと)は夢なれや、秋風さむし飛鳥川の淵瀬こゝに變はりて、よからぬ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

その一~その四「文學界 一九号」文學界社雜誌社、1894(明治27)年7月30日<br>その五~その六「文學界 二一号」文學界社雜誌社、1894(明治27)年9月30日<br>その七~その十二「文學界 二三号」文學界社雜誌社、1894(明治27)年11月30日

底本

  • 文學界 一九号、二一号、二三号
  • 文學界社雜誌社
  • 1894(明治27)年7月30日、9月30日、11月30日