ぜにがたへいじとりものひかえ 083 てっぽうじる
銭形平次捕物控 083 鉄砲汁

冒頭文

一 「親分、近頃金の要るやうなことはありませんか」 押詰つたある日、錢形平次のところへノツソリとやつて來たガラツ八の八五郎が、いきなり長い顎(あご)を撫(な)でながら、こんなことを言ふのです。 「何だと? 八」 平次は自分の耳を疑ふやうな調子で、長火鉢(ながひばち)に埋めた顏をあげました。 「へツ〳〵、へツ〳〵、さう改まつて訊かれると極りが惡いが、實はね、親分。思ひも

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1938(昭和13)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十三卷 焔の舞
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月5日