ぜにがたへいじとりものひかえ 007 おさんほりものしらべ
銭形平次捕物控 007 お珊文身調べ

冒頭文

一 「やい、ガラツ八」 「ガラツ八は人聞きが惡いなア、後生だから、八とか、八公とか言つておくんなさいな」 「つまらねエ見得(みえ)を張りあがるな、側に美しい新造でも居る時は、八さんとか、八兄哥(あにい)とか言つてやるよ、平常(ふだん)使ひはガラツ八で澤山だ。贅澤を言ふな」 「情けねえ綽名(あだな)を取つちやつたものさね。せめて、錢形の平次親分の片腕で、小判形の八五郎とか何とか言や——」

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十三卷 焔の舞
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月5日