ぜにがたへいじとりものひかえ 032 ろじのあしあと
銭形平次捕物控 032 路地の足跡

冒頭文

一 「錢形の親分さん、お助けを願ひます」 柳原土手(やなぎはらどて)、子分の八五郎と二人、無駄を言ひながら家路を急ぐ平次の袖へ、いきなり飛付いた者があります。 「何だ〳〵」 後から差覗(さしのぞ)くガラツ八。 「何處か斬られなかつたでせうか、いきなり後ろからバサリとやられましたが——」 遠灯(とほあかり)に透(すか)せば、二十七八の、藝人とも、若い宗匠とも見える

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1934(昭和9)年9月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十三卷 焔の舞
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年9月5日