ゆめ

冒頭文

夢の話をするのはあまり気のきいたことではない。確か痴人夢を説くという言葉があったはずだ。そう思って念のために辞書をひいて見ると、痴人が夢を説くというのではなくして、痴人に対して夢を説くというのがシナのことわざであった。夢の話をすること自体が馬鹿げたことだというのではない。痴人に対して夢の話をするのが馬鹿げているというのである。そうなると大分むつかしくなる。どうしてそれが馬鹿げているのであろうか。反

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1952(昭和27)年9月

底本

  • 和辻哲郎全集 補遺
  • 岩波書店
  • 1978(昭和53)年6月16日