じんめんぎょうし |
| 人面凝視 |
冒頭文
ふとして眺むれば彼処(かしこ)に笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者であるわれは今その面を見つつ想う唇……おおそは紅の渕に囲われし底知れぬ沼である 鼻…… おおそはまろみあるエジプトのピラミットである 眼…… おおそはうるおい耀く黒曜石の玉を秘めし二つの湖水である 眉…… おおそは湖水をめぐりて小丘の上に繁れる林であるおおなめらかに広き無毛の原を過ぎ行けば彼方は千古の密林である。
文字遣い
新字新仮名
初出
「旭川新聞」1926(大正15)年10月1日
底本
- 今野大力作品集
- 新日本出版社
- 1995(平成7)年6月30日