まっていたひとつのふうけい |
| 待っていた一つの風景 |
冒頭文
痩(やせ)たる土壌をかなしむなく遠き遍土にあるをかこつなく春となれば芽をだし夏となれば緑を盛り花を飾る貧しく小さくして尚たゆまずただ一つ秋、凡ての秋においてただ一つ種を孕んだわが名知らぬ草精一杯に伸びんとして努力空しく夏のま中炎天のあまり枯死してしまったものもある草にして一生は尊い生命の凡てである一つの種は一つの種をはらんだそして遍土の痩土に初冬のころ雪を戴き埋れ、静かに待っていた一つの風景 一九
文字遣い
新字新仮名
初出
「旭川新聞」1928(昭和3)年1月26日
底本
- 今野大力作品集
- 新日本出版社
- 1995(平成7)年6月30日