こうかい
航海

冒頭文

大いなる家鴨(あひる)の姿に似たる連絡船の三等船室にて 不愉快な動揺を感じ軽い頭痛(とうつう)に悩まされ渡り行く島の奥地に痛み悩む母への哀切に泣きつつひとりし寝転べば出稼人夫等の行く先々の未だ見知らざる地への憧れに満ちたる足に触れ最初は驚き縮(すく)んだ私ではあるが夢を持たない旅人のあらぬことをしみじみ我ながら感じては貧しき出稼労働人の心にもろくも兄弟達の涙を感じ足を伸べ組み添え瞳を交し 微笑さえ

文字遣い

新字新仮名

初出

「旭川新聞」1928(昭和3)年5月31日

底本

  • 今野大力作品集
  • 新日本出版社
  • 1995(平成7)年6月30日