ぜにがたへいじとりものひかえ 081 じゅなんのつうじん |
銭形平次捕物控 081 受難の通人 |
冒頭文
一 錢形平次が關係した捕物の中にも、こんなに用意周到で、冷酷無慙(れいこくむざん)なのは類のないことでした。 元鳥越の大地主、丸屋源吉の女房、お雪といふのが毒死したといふ訴(うつた)へのあつたのは、ある秋の日の夕方、係り同心漆戸(うるしど)忠内の指圖で、平次と八五郎が飛んで行つたのは、その日も暮れて街へはもう灯(あかり)の入る時分でした。 「へエー、御苦勞樣で——」
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1938(昭和13)年10月号
底本
- 錢形平次捕物全集第十二卷 鬼女
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年8月25日