ぜにがたへいじとりものひかえ 022 めいばつみあり
銭形平次捕物控 022 名馬罪あり

冒頭文

一 「おつと、待つた」 「親分、そいつはいけねえ、先刻——待つたなしで行かうぜ——と言つたのは、親分の方ぢやありませんか」 「言つたよ、待つたなしと言つたに相違ないが、其處を切られちや、此大石(たいせき)が皆んな死ぬぢやないか。親分子分の間柄だ、そんな因業(いんごふ)なことを言はずに、ちよいと此石を待つてくれ」 「驚いたなア、どうも。捕物にかけちや、江戸開府以來の名人と言はれた親分だが

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1933(昭和8)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十二卷 鬼女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年8月25日