ぜにがたへいじとりものひかえ 023 ちしおとぬか
銭形平次捕物控 023 血潮と糠

冒頭文

一 「親分、面白い話がありますぜ」 ガラツ八の八五郎、錢形平次親分の家へ呶鳴(どな)り込みました。 「相變らず騷々しいな、横町の萬年娘が、駈落したつて話なら知つて居るよ」 錢形の平次は、戀女房のお靜に顏を當らせ乍ら、滿身に秋の陽を浴びて、うつら〳〵とやつて居るところだつたのです。 「へツ、そんなつまらない話ぢやねえ。——ところでお靜さん、——いや姐御(あねご)つて言ふ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1933(昭和8)年11月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十二卷 鬼女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年8月25日