よるのさんか
夜の讃歌

冒頭文

地は定形(かたち)なく曠空(むなし)くして黒暗(やみ)淵(わだ)の面にあり 神の霊水の面を覆ひたりき ——創世記 黒暗(やみ)の潮 今満ちて 晦冥の夜(よる)ともなれば 仮構の万象そが閡性を失し 解体の喜びに酔ひ痴れて 心をのゝき 渾沌の母の胸へと帰入する。 窓外の膚白き一樹は 扉(とぼそ)漏る赤き灯(とぼし)に照らされて いかつく張つた大枝も、金属性の葉末もろ共

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 富永太郎詩集
  • 現代詩文庫、思潮社
  • 1975(昭和50)年7月10日